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山梨県広報のXML化事例から考える


・XML化実践事例の概要

 2003年3月、山梨県ではWebサイトのリニュアルに合わせて、膨大な量に膨れ上がったWebページを、データベース管理によってユーザーである県民の情報検索性の向上を目的とした広報情報XMLシステムを実現した。
 XML化にあたっては、ロイターなどが中心となり、世界的なニュース情報のボキャブラリである「NewsML」を、自治体としては初めて採用し、具現化に至った。
 山梨県がWebによって発信するニュース情報は、平均6本/日、多い場合には20本/日に至る。各ニュースには様々な要素が含まれ、県のWebサイトの適切な関連ページからのリンク貼り作業は、これまで手作業で山梨県の広聴広報課職員が対応していた。また公開期限後の旧い情報も、職員が確認し、手作業で削除するなど、これら手間作業も限界に達し、XMLシステムの開発・導入に至ったのである。

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 また現課でのニュース入力は、従来からの庁内グループウェアに蓄積された文書をそのままWebサイト向けに配信していた。しかしその際に、ワープロ作成したこれら文書を技術的問題から、画像ファイルとして公開するに留まり、ユーザーは画像ファイルを閲覧する事を強いられていた。この場合、文字検索で該当文書を探し出せず、しかも視覚障害者向けの音声読み上げシステムにも当然対応はできない。
 そこでこれらの課題解決として、山梨県ではXMLシステムの実現を目指したが、現場でのニュース入力にXML専用エディタ等での対応を強いては普及に至らないことから、ブラウザ上の入力フォームインターフェースを構築し、メタデータも含め、フォームの空欄への文書入力という形で現場での入力が取り組まれている。
 この結果、山梨県では各課から発信される情報量が増加する効果が生まれた。これはXML化と同時に、従来の現課での公開承認とWebサイトを運営する広聴広報課での公開承認の2段承認であったものを、現課承認へ一元化したことによるところも大きく、正確な情報が迅速に掲載され、このルール変更もあって、現場では従来以上に積極的な情報提供が取り組まれている。
 また今後は県内の市町村とのWeb連携も目指しており、甲府市などとの試験的なニュース情報交換も始められている。
県民は一般に、県情報・市町村情報の区別をすることなく自治体情報に接している。しかし情報発信元は、県・市町村と各々である。そこで山梨県では、市町村とのWeb連携を基として、行政情報ポータルの一元化を図ることを目指している。自らの実践事例を踏まえ、県下の市町村が同じコンテンツ環境で結ばれるようNewsMLの採用を働きかけているとのことだ。

・印刷業としての視点から山梨県事例を考える

 山梨県の事例において残念なことは、せっかくXMLドキュメントのデータベースが構築されていながら、取り組みがWebの範囲に留まっており、これまで詳しく考察してきたような、多様な業務ステージを通じた「入力、編集、出力」など、ドキュメント内容を多面的に利活用するというXML本来の役割発揮が全く図られていない点である。
 これは、この情報化に印刷業が関与できなかった事情と関連しているものと考えられる。山梨県の印刷広報は、同じ広聴広報課にて取り組まれているが、これまでの慣習から、印刷広報、Web、そしてプレスリリースの発信情報が、各々別フローでコンテンツ制作されている。そこで各々の文章表現なども異なり、このルールの統一化を目指した調整に時間をかけるよりも、直近の課題であるWebサイトの効率化を第一目標に、今回のXML化は取り組まれ、複数のシステム業者にプロポーザルを求め、その結果、地元のAシステムズがシステム構築に至った。

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 また県の広報を受注する印刷会社によると、このXML化の取り組みは、実現した後に初めて知ったとのことであった。こうしたことは、現状の印刷広報の取り組みが、デザイン表現という側面を優先していることから、山梨県サイドとしても、印刷業がXML化に対する協力者である、との認識を持ってはいなかったためであろう。
 「自治体が認識してくれないから仕方がない!」「Webは印刷業の対応領域ではない!」と印刷業自らが逃げていては、コンテンツ編集業である印刷業の役割は益々狭まっていく。そこで印刷業としては広報業務のXML化展開を印刷業ならではの発想から積極的に提案すべきである。
 広報情報データベースのようにコンテンツの編集加工が必要となるシステムとは、システム導入が終着点ではなく、システム導入が出発点であり、その後には情報編集の様々な作業が発生する。ニュース情報の全覧作成や、他のコンテンツとの連動による各種ドキュメント・印刷物の作成などである。
印刷業としてそれを待つのではなく、自治体のコンテンツや業務を分析し、現在制作される印刷物制作の効率化に、データベースがどのように適用でき、どんな情報処理加工やスタイルシート設計、DTP自動組版連動が可能となるのかを分析し、積極的にコンテンツのプロである印刷業として、たんなるシステム業とは画然と差別化できる提案をなすべきである。
 自治体内部の組織、ワークフロー改革が必要となるこの取り組みは、敷居が高いと思われるであろうが、自治体の根本的な目標は、業務効率化とコスト削減という行政改革の実現である。そこで現場担当者との関係ばかりでなく、まずは改革を目指す自治体経営層にその意義を示し、トップダウンによる業務改革への道筋を明確化した上で、リエンジニアリングとして取り組まれることが求められよう。そうすることで「コラボレーションによるビジネスモデル」という新たなビジネスのあり方を創造し、印刷業が地域の情報化に不可欠な新たな情報サービス業としての位置付けを獲得できるものと期待される。
 印刷会社が取り組みために必要となる力は,XML技術を中核とした情報編集力+メディア対応力+ビジネスモデル企画力である。これらすべてを実現できる企業が条件となるが,1社で不可能であれば,印刷会社が中核となり,地域内企業連携によるコラボレーション型ビジネスで取り組むことも1つの方法である。この印刷業連携が,全国における電子自治体のサポーターとして機能し,行政改革の実現につながることとなればと考える。

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